猫がくしゃみをしたり、鼻水を垂らしていると「人間の風邪みたい」と思ってしまうこと、ありませんか？
でもそれは、もしかしたら“猫風邪（猫カゼ）”と呼ばれる病気かもしれません。
猫カゼは人の風邪と違ってとっても怖い病気。
特に体力のない子猫や高齢の猫さんにとっては、命に関わることも・・・
だからこそ、「ただの風邪」とあなどることなかれ。
初期症状のくしゃみや鼻水を飼い主さんが早めに気づいてあげることが何より大切なんです。
猫カゼってどんな病気？
そもそも「猫カゼ」とはなんでしょうか。
「猫カゼ」とはひとつの病気ではなく、以下のような呼吸器系の感染症の総称です。
・猫ウイルス性鼻気管炎（猫ヘルペスウイルス感染症）
・猫カリシウイルス感染症
・猫クラミジア感染症
くしゃみや鼻水、発熱など、症状は人間の風邪によく似ていますが、進行が早く、特に子猫やシニア猫では重症化しやすいのが特徴。
ちなみに猫カゼのウイルスは人間にはうつりませんし、飼い主の風邪が猫にうつることも基本的にはありません。
お互いに似ているようでまったく違うウイルスが原因なので、その点は少し安心して大丈夫です。
しかし猫ちゃんに現れる症状が「いつもと違うかも…？」と感じたら、迷わず病院を受診しましょう。
猫カゼの症状とは？｜ウイルス別の違いと注意点
【共通して見られる症状】
- くしゃみ
- 鼻水（鼻汁）
- 発熱
- 食欲の低下
【ウイルス・細菌ごとの特徴】
- 猫ヘルペスウイルス：目やに、結膜炎、角膜炎（目が赤くなる、目をしょぼしょぼする）
- 猫カリシウイルス：口内炎、舌炎、よだれが増える
- 猫クラミジア：気管支炎、肺炎、結膜炎、ドロッとした目やに
🕒 症状の進行例（飼い主が気づくタイミング）
はじめは「ちょっとくしゃみが出てるな」くらいでも、次の日には目やにが増え、ごはんを残すようになり、急にぐったりしてしまうことも…。子猫は1日で急変することもあります。
「なんとなく元気がない」「目がうるうるしてる」といった小さな変化も見逃してはいけません。
自然と治るとは限らない“猫カゼ”
「ちょっとくしゃみしてるだけだから…」
「しばらく様子を見てみようかな…」
そんなふうに思ってしまう気持ち、よくわかります。
でも猫カゼは、“時間が解決してくれる病気”と言い切れるものではありません。
たしかに、体力のある健康な成猫なら自然に回復することもあります。
しかし子猫や高齢の猫、持病がある子にとっては、命にかかわる病気になることもあるんです。
❗ 放置によるリスク
- 食欲不振による衰弱
- 角膜炎・癒着による視力障害や失明
- 鼻涙管の閉塞で涙が止まらなくなる
- 慢性的な鼻炎、くしゃみや目やにの後遺症
そして、どうしても知っておきたいのが、
猫カゼの原因となるウイルスは、一度体内に入り込むと、完全には消えてくれないということです。
たとえ一時的に症状が落ち着いても、猫はストレスや免疫力の低下をきっかけに、何度でもくしゃみや鼻水などの症状をぶり返してしまいます。これがいわゆる「キャリア」と呼ばれる状態です。
だからこそ、「もう少し様子を見ようかな」と思っているその時間が、症状を悪化させてしまう分かれ道になることも・・・
猫カゼは、早く気づいて、早く対処することが何より大切。そしてできることなら一度も猫かぜにかからせない＝予防こそが、私たち飼い主にできるいちばんのやさしさなのかもしれません。
感染経路に注意！室内飼いでも油断は禁物？
「うちは完全室内飼いだから大丈夫」――そう思ってしまいがちですが、実は猫カゼは室内で暮らす猫にも感染する可能性のある病気です。
猫カゼの主な感染経路は、くしゃみや唾液を介した“飛沫感染”。
外に出る猫ちゃんだけでなく、私たち飼い主が外からウイルスを“連れて帰ってしまう”こともあるのです。
🐾 猫カゼの主な感染経路
- 外猫との接触
外で他の猫に触った手や、野良猫がいた場所を通った靴などにウイルスが付着することがあります。 - 食器・トイレの共有
猫同士の間でウイルスが広がりやすく、多頭飼いでは特に注意が必要。 - 飼い主の衣類や靴から持ち帰るケース
においに敏感な猫が衣類や靴に鼻を近づけるだけでも、感染のきっかけになることがあるそう。
🏠 多頭飼いの場合の対応
1匹に症状が出たら、すぐに別室に隔離しましょう。
猫カゼは飛沫や接触で簡単にうつるため、ひとりが感染すると、すぐに他の子にも広がってしまうことが多いのです。
- 寝床・トイレ・食器は共有しない
- お世話のたびに手洗い・必要に応じて服の着替えも
ワクチンも予防のひとつの手段
猫カゼを完全に防ぐことは難しいですが、予防策のひとつとして「ワクチン接種」があるということも、知っておいて損はありません。 ワクチンには、猫カゼの原因となるウイルスへの感染や重症化を防ぐ働きがあるとされています。
💉 猫用ワクチンの種類とは？
猫カゼの主な原因となるウイルスから守ってくれるワクチンには、いくつかの種類があります。
・3種混合ワクチン（コアワクチン）
猫ヘルペスウイルス感染症
猫カリシウイルス感染症
猫汎白血球減少症（パルボウイルス）
・5種混合ワクチン
上記3種に加えて、
猫クラミジア感染症
猫白血病ウイルス（FeLV）
特に外に出る猫や、多頭飼いで他の猫と接触が多い子にとっては、こうしたワクチンが感染症のリスクを下げる助けになります。室内飼いでも、最低3種混合（コアワクチン）は接種しておくことが奨励されていることが多いです。
⚠ ワクチンの副反応についても、少しだけ知っておきましょう
ワクチンは、猫カゼをはじめとした病気を防ぐための大切な手段のひとつ。
でも実は、体に負担をかけることもあるということも、知っておいて損はありません。
接種後にちょっと元気がなくなったり、まれにアレルギー反応やしこりができるケースもあると言われています。
最近では、国際的な獣医師団体（WSAVAなど）でも、ワクチンの「接種頻度」について見直しの声[1]があがってきていて、以前のように「毎年当たり前に打つ」という考え方も少しずつ変わってきているようです。
だからこそ、「みんな打ってるから」ではなく、その子の体質や年齢、暮らし方に合った判断をしてあげたい。
そしてその判断は、信頼できる獣医さんといっしょに考えていくのがいちばん安心ではないかと思います。
[1] WSAVA（世界小動物獣医師会）の最新ワクチンガイドライン本文（英語）
まとめ｜「ただの風邪」じゃないからこそ、日々の変化に注意を
猫のくしゃみや鼻水、ちょっとした目やに。
一見すると軽い風邪のようでも、猫カゼは進行が早く、命に関わることもある怖い病気です。
「くしゃみしてるな」「ごはんの食いつきが悪い」「目がうるうるしてる」――
そんな小さな変化が、早期発見のサインになることも。
特に子猫やシニア猫は体力がなく、1日で急変することもあります。
だからこそ、「様子を見ようかな」ではなく、いつもと違うと感じたらすぐ行動を。
愛猫の“いつも通り”を守るのは、私たち飼い主の気づきから。
その小さな気づきが、きっとこれからの安心につながっていくはずです。
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